ようやく冬の寒さもゆるみ始めた頃。
橋の名は、
“未来へ駆けるゼ、百万遍大橋”

…………揃って苦笑するイツ花と一族達。
賀茂川のほとりまで足を伸ばすと、橋脚は既に半分くらい仕上がっていました。

「そういえば……」
あれはまだ、雪の降りしきっていた先月のこと。
屋根に積もった雪を下ろそうと、掃除大好きな五代当主・真之介が立て掛けた梯子に登ると、家並みの向こう、賀茂川のほとりで何やら人だかりが。
気になった皆が揃って様子を見に行くと、川岸で何かの工事が始まるところでした。

ご近所さんと顔を合わせて「何が出来るんでしょうねぇ…」と噂していたものが、これだったとは。
橋が完成すれば、洛中の往来も更に盛んになるでしょう。
完成が楽しみです。
さて、今度は公共部門への投資が実を結び、とうとう漢方薬屋に新薬が登場しました。
その名も「地黄玉金丸」。
最初からある「千金人参」と比べて、効果は約1.5倍、値段は10倍。
…………ぼったくる気満々ですね。素晴らしい。
四ヶ月連続交神二回目、今月は五代・真之介の番です。
お相手は何と、幸彦と同じ椿姫ノ花連。

「…いや、奉納点と遺伝情報を鑑みて決めたんだ、決して乳袋では……」
……ともかく、鈴の音と土の匂いに包まれて、交神の儀は無事に執り行われたようです……
…………次も女の子だよ…………
儀式が終わり、皆が勢揃いしたところで、イツ花が全員を奥の間へ。

得意の口三味線と共に連打を決め、一族の先鋒として奮闘し続けた幸彦。
その血を分けた子の顔を見ることはついに叶わず、桜の花の咲き始めたその日に、静かに息を引き取りました。
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